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《 ブラックボックス 》

今の今まで美津子は自分の布団にくるまっていた事に気づきました。

「美津子、早くしなさい。今日は、お父さんが帰って来る日でしょ。

 やる事やっとかないと、会社の方もみえますからね。」

「はあい。」

美津子は、元気にとび起きるとせわしくかけずりまわりました。

美津子は、なにげなく玄関へ行ってみました。

傘たてには ちゃんとサーモンピンクの花がらの傘がありましたし、

ゲタ箱をあけて見てますと夢の中で

はいた赤いサンダルもありました。

美津子は納得したように微笑むと食卓の用意をすませ、

お母さんと お父さん達の帰りを 待ちました。

 

その日の夕方、お父さんが 会社の同僚といっしょに

帰って来ました。

「よう美津子ちゃん おおきくなったなぁ。」

お父さんは 自慢気に、「今度 高一になる

 どう美人になってきたろう。」とニコニコ顔。

「もうッ お父さんったらぁ。」

美津子も うれしくて仕方ありません。

「お疲れになったでしょう。うちの人、不調法ですから。」

「いやあ なかなか…たいした御主人ですよ。」

美津子は、前にもその会社の人に会ったことがありましたが。

お父さんと馬が合うらしく、なかなか感じのいい おじさんです。

「そうだ そうだ。」

お父さんはニコニコと奥さんと娘の顔を見比べながら

「おみやげ買ってきたぞォ」と、

美奈子に小さなきれいな包装紙のかかった箱を、

お母さんには 少しばかり 大きな包みをわたしました。

美津子のは 何かしらとあけてみますと。

ラメのかかった美しい小鳥のブローチでした。

「わあッ ステキィ ありがとうお父さん!」

美津子は うれしくなってお父さんの首に抱きつきました。

「 こら こら 甘えんぼうッ 」とお父さん

ニコやかに笑います。

「さぁ、母さんも あけてごらん。」

お母さんも お父さんに めくばせしながら うれしそうに 包みを

開けました。

「まぁシンプルな花瓶だこと!」

お母さんが 手に取った物は、バスケットボールぐらいの真っ黒な球体でした。

美津子は 目をまんまるくした。

 

ー THE END ー

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