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《 ブラックボックス 》

目がくらむほどの純白な空間が彼女を包み込み、

それと同じに白い空間は美津子が 駆け込んできた扉をかき消すように

のみこんで ゆきました。

 

美津子はしばらく生きた心地のないまま茫然としていました。

「ようこそホワイトボックスへ」

え? ホワイト…ボックス?

「ハワイトボックスへ ようこそ。」

またまた声はしますが 姿は 見えません。

「ここが ホワイトボックスなのね!」

美津子の胸は ぱっと晴れ わたりました。

 

「ねェ あなた誰? 姿を見せて。」

「私はサアラス。透明体なのです。」

美しく透き通ったやさいい女性の声です。

美津子は ふと考えました。

あのブラックボックスのカラス君みたいなものね。

「あのォ サアラスさん、家へ帰るには どうすればいいんですか?」

するとサアラスは言いました。

「御質問に答えます。ここには多くの扉があります。

 そのうち、あなたの世界へ帰れる扉はただ一つ。

 一つの扉をあけるとそれでワンゲームは終了します。

 私は どの扉がどの世界に通じているのか全く存じません。」

「えッ?!」

どうもおかしな話になってきました。

「じゃあ 他の所の扉を開けちゃったら どうなるの?」

 

「その世界の ブラックボックスを お探しください。

 ブラックボックスは 各世界へ一つずつ 設置されております。」

「そんなぁ イチからやり直せってことォ?!」

「そういう こと になります。」

その時、パンッと手をたたいたような音がしたかたと思うと、

次の瞬間、純白の空間に、大小色様々な扉が無数に浮かび上がりました。

美津子は、めんくらって 気を失いそうになりました。

その時、

美津子ォ! 美津子ォ!

彼女をゆさぶる者が あります。

美津子ォ!!

なつかしい響きです。

 お母さん!!

美津子は はっとしました。

小鳥のさえずりが聞こえてきます。

「美津子、いつまで寝てるの、早く起きなさい。」

夢を、見ていたのね。

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