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《 ブラックボックス 》

お母さんにお父さん…あたしが突然いなくなって…

どうしてるかなぁ。心配してるよね?

無事帰れたら…。あああ…。

美津子は、手に持っている傘をふりまわしながら、途方にくれて

ふてくされていました。

ふと、まっすぐ前をみてみると、どうもその先が行き止まりのようです。

え?うそ …とばかり、美津子は急いで行ってみました。

確かにその廊下の行く手には壁がありました。

しかし右壁に デコボコのない全く壁と同じ色の両開きの扉があるのが

見てとれました。

美津子は 傘を脇にはさむと、うんと力を入れて、

両手で扉を押してみました。

するとその扉はギギイと音をたてて、向こう側へ開きました。

 

はたしてその向こうは、床も両壁も天上も真っ黒。

天井には大きな蛍光灯が数メートル間隔に光っていて

黒塗りの廊下全体を明るく照らしていました。

その廊下は 今までとはちがって、そのはるか先に

かすかに扉らしきものが見えます。

そこを進む以外に道はないようです。

美津子は 傘を持ちかえると歩きだしました。

後でギギイとまた扉の閉まる音が聞こえましたが

美津子の目は まっすぐ向こうの扉に向けられています。

その扉まで あと、5,6歩という所で 美津子はふと足を止めました。

真っ黒な左壁に何か丸い穴が一つ、ぽっかりと空いていました。

何気なく美津子が その穴を見ていると、いきなり、

ぬっと黄色いモノが出て来て彼女の左腕にぐっとつかみかかりました。

美津子は悲鳴をあげて持っていた傘をふり上げ、

その黄色いモノに2,3度 叩きつけました。

するとその黄色いモノは するすると彼女の腕を放すと穴に引っ込んで

ゆきました。

美津子は それを確認する間もなく 半狂乱になって、目の前の扉へ飛び

込みました。

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