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《 ブラックボックス 》

 美津子のお父さんは ある貿易会社の一従業員。

美津子の家は ごく平凡。

お父さんは 海外出張。

今度 高一になる美津子は 独りっ子。

新しい高校生活に夢みながらも平凡な春の日は

毎日毎日が たいくつ。

あーあ 何か変わった事ないかしら。

そんな春のある日、お父さんが 変わった おみやげを

持って帰ってきたのです。

それは バスケットボールぐらいの真っ黒な球状のもので

コロコロころがらないように 底の方が 心持ち平らになっていて

その真反対、つまり天辺頂きは ジュースのビン口ぐらいの

まあるい穴が開いているだけの物でした。

お母さんが それを見て言うには、

「まぁ シンプルな花瓶だこと。」

ところが お父さん、首を横にふりました。

 

 

「なあに? これ …。」

美津子は それを手にとって、クルクルまわしてみながら

お父さんの顔を見て ふと聞きました。

お父さんは ニコッとすると

「その穴を覗いてごらん。」と言ったのです。

美津子は 片目をつぶると、もう片方で中を覗いて見ました。

「なっ なあに これッ!!」

その穴を覗いたまま思わず美津子は叫びました。

「どうしたの」とお母さんも見せてと美津子の持っている物に

触れようとしましたが 美津子は それを はなそおうとしません。

「何が 見えた美津子?」とお父さん。

その時 美津子は 頭の中で こんな歌を聞きました。

ブラック ボックス ブラック ボックス

覗いて見れば あらあら不思議

ブラック ボックス なあにが見えた?

一度 覗けば 誰でも虜

やめられなくなったら さぁ たいへん

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