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《 ブラックボックス 》

さぁ たいへん! 歌が終わったとたん 美津子は

その小さな小さな穴に 吸いこまれてしまいました。

 美津子ォ! 美津子ォ!

両親の叫びを 夢うつろに聞きながら、美津子は

ゆっくりと落ちて行くのを感じました。

いったい いつになったら下につくのかしら。

そう思われるほど、どんどん美津子は 落ちてゆきます。

やがて 彼女は 落ちるのが止まったと思いました。

落ちた底?は ひんやりと冷たく あたりは 真っ暗。

美津子は しばらく呆然としていました。

ここは? どこかしら。きょろきょろ あたりを見回して

みるければ、上も下も斜めも横も見渡す限り真っ暗気。

お父さんは? お母さんは?

だんだん美津子は 心細くなってきました。

じっとしていると、だんだん恐くもなってくる。

誰かに見つめられているような そんな気もします。

「誰かいるの?」

 

美津子は もう一度、前よりも大きな声で言ってみました。

「誰か いるなら返事してェ!!」

彼女の声は あたりに吸い込まれてゆくようです。

しばらく 彼女は押し黙って、何かしらの反応を待ちました。

けれども あたりは 無気味にシンとしています。

美津子は そこにしゃがみこむと フゥッとため息をつきました。

 

こまっちゃったなぁ。誰か ここがどこだか教えてよ。

そう彼女が思ったその時、

 ブラック ボックスへ ようこそ お嬢さん

「えっ? 」 頭の上から確かに そんな声がしました。

美津子は しゃがみこんだままの姿勢で 思わず上に目をやりました。

すると、バタバタとはばたく音にまじって

カァカァ鳴く声がだんだん近くなってきました。

「ようこそ ブラック ボックスへ 」

しゃがれた おかしな声です。

「だぁれ? どこにいるの?」

美津子は その声がする方に目をこらして見ますが。

 

真っ暗で 何も見えません。

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