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《 窓辺の月下離人 》
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《 ブラックボックス 》
あいかわらず しゃがれた声ですが、どうもさっき
頭の中で 響いた歌の調子に 似ています。
ブラック ボックス ブラック ボックス
その先には 何が ある?
ブラック ボックス なあにが 見えた?
ブラック ボックス 中に入れば 真っ黒気 アアー
真っ黒けのけっけ アアー アアー
おいらは 闇夜のカーラース
ブラック ボックスの管理人(マネージャー)
ブラック ボックスの案内人 アアー アアー
おいらは 闇夜のカーラース
美津子は しばらくキョトンとしていましたが、
やがて口を開きました。
「それじゃあ カラスさん あなたが あたしをここにつれて来たの?」
するとカラス。
「残念でした。 君が勝手に来たわけさ。」
「おいらは この後、君の案内係をするだけさッ
そいつが終わったら、ここの管理職にもどる。」
「それじゃ 案内してくれる? でも いったい何があるの?
真っ暗じゃない。ぜんぜんわからないわ。」
「よしきた。 ただし ここには果てがないから 気をつけて。」
パタパタ羽音は しますが そのカラス あいかわらず
どこに いるのが さっぱり わかりません。
美津子自身は…まるで自分の体だけが スポットライトをあびているかの様に、くっきりと自分の手足が見えているというのに。
全く姿の見えないカラスは 説明しだしました。
「えーここ ブラックボックスには 無数の扉がありまして
そのどれを開いてもけっこう。
ただし、その一つを開いて中に入ったなら、
2度とこのブラックボックスへは、戻れません。
また、無数の扉のうち、直接 君の住んでいた世界へ帰れるホワイトボックス
へ行ける扉は、ひとつしかない。」
「ホワイトボックス?」 思わず美津子は尋ねました。
「そのォ 君の世界から来た所が、ここブラックボックス。
なら、君の世界へ戻ることのできる所が つまりホワイトボックス。」
「フウン、よくわかんないけど、わかったことにしとくわ。
それから?」
「そんだけだよ。後は、どの扉を開くか、君が選ぶだけさ。
お嬢さん、言わば これは ゲームだよ。」
「ゲーム?」
美津子は 思いました。これは ちょっと冷や汗もの。
「でも 扉って どこにあるの? 何も見えないわ。」
「見えなくても その辺に いっぱいあるのさ。
なんせ果てがないから そこいらじゅう 扉だらけだよ。」
カラスは そう言うと カァカァ とびまわりました。
羽音で それは美津子にも わかります。