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《 ブラックボックス 》

ちょっぴり悲しい気もします。けれども美津子は

頑張ると 左こぶしの人差し指の関節を軽くかみしめました。

そこは 見わたす限り 彼女の家の玄関そのものでした。

ただひとつ、わけが違うのは、その玄関の先のおなじみの廊下が、

延々とつづいていることでした。

 この廊下の先に、ホワイトボックスがあるかもしれない。

​いやきっとあるって信じなきゃ辿りつけないのかもしれない?

美津子は 何を思ったのか、ゲタ箱のひらきを開けてみました。

下から2段目の真ん中に、ちゃんと美津子のお気に入りの

赤いサンダルが入っています。

美津子は それを手に取ると、足にはかせ。

そして、サーモンピンクの花柄模様の傘を手にとり

廊下の上へ上がりこみました。

さあ 行くわよ美津子。彼女は、そう自分に言いきかせ

深呼吸をすると歩きだしました。

考えてみれば、この先に何があるのか たのしみです。

そうよ これは ゲームだわ。ゲームは たのしまなくっちゃ。

 

しかし、あまりにも その廊下は延々と続き過ぎています。

そのずっと先の方は もやがかかっていて、進んでも 進んでも

同じように 進むばかりです。

美津子は 何度も じれったくなって駆けだしましたが

やがては疲れ、休んでは歩きだし、走っては休みを繰り返し

といった具合。

けれども 一向に何の変化も起こりません。

「あああ、もうどのぐらい来たかしら…。

 おなかすいたなぁ。」

なんだか甘い物が食べたい。

美津子は ふといちごの乗っかったショートケーキを

思い浮かべてみました。

すると どうでしょう。

2メートル程先の右壁に 何か黒いものが 浮かびあがりました。

何事かと行ってみますと、彼女の目の高さぐらいの所に

小さな小さな扉があるではありませんか。

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