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《 ブラックボックス 》

美津子は 恐る恐る 小さな小さな扉を開けてみました。

扉の奥には 美津子が想像したとおりの 美味しそうな

ケーキが 入っていました。

美津子は ちょっとためらいながらも、それに手をのばしてみました。

何事も起こりません。

ジュースもあればいいのに、美津子は また想像してみました。

すると今度は 左側の壁にさっきと同じような扉が

みるみるうちに浮かび上がってきました。

「うはあ ついてるウッ。」

美津子はうれしくなって その扉を開きました。

ジュースは、ちゃんと入っていました。

​しかも、一口 飲んでみると、イメージしてたリンゴジュースです。

美津子は、床にしゃがんで壁にも たれかかって( ひと休憩。)

ケーキを食べ、ジュースを飲みはじめました。

「けっこう いけるじゃない。このジュースも美味しい! 」

美津子は 食べながら もう一度、今までの事を考えてみました。

どうして こんなことになっちゃったのかしら?

 

あの闇夜のカラス君は、あたしが勝手に来たと言ったわ。

だけど あたしは 来ようなんて思ったこともなければ

考えたこともないわよ。どうも矛盾してるわ。

ああもう考えても仕方ないわね。

要は、ホワイトボックスとやらに着けばいいのよ。

美津子は ケーキをたいらげ、ジュースを飲みほすと

それぞれ元の扉へちゃんと戻しました。

扉を閉じたとたん、扉はすうっと壁の中へ消えて行きました。

「おいしいケーキとジュースを ありがとう!!」

美津子は、左右の壁にお礼を言うと、サーモンピンクの花柄模様の傘を拾って

再び歩きだしました。

まだまだ同じながめの廊下は、 延々と遠くつづいています。

まったくきりがないんじゃないかしら。

美津子は 何度も途方にくれました。

足も少々 痛んでいます。

いったい どこまで続いているのよ!!

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