top of page
❤︎ Welcome!
《 窓辺の月下離人 》
Page7
《 ブラックボックス 》
美津子は 恐る恐る 小さな小さな扉を開けてみました。
扉の奥には 美津子が想像したとおりの 美味しそうな
ケーキが 入っていました。
美津子は ちょっとためらいながらも、それに手をのばしてみました。
何事も起こりません。
ジュースもあればいいのに、美津子は また想像してみました。
すると今度は 左側の壁にさっきと同じような扉が
みるみるうちに浮かび上がってきました。
「うはあ ついてるウッ。」
美津子はうれしくなって その扉を開きました。
ジュースは、ちゃんと入っていました。
しかも、一口 飲んでみると、イメージしてたリンゴジュースです。
美津子は、床にしゃがんで壁にも たれかかって( ひと休憩。)
ケーキを食べ、ジュースを飲みはじめました。
「けっこう いけるじゃない。このジュースも美味しい! 」
美津子は 食べながら もう一度、今までの事を考えてみました。
どうして こんなことになっちゃったのかしら?
あの闇夜のカラス君は、あたしが勝手に来たと言ったわ。
だけど あたしは 来ようなんて思ったこともなければ
考えたこともないわよ。どうも矛盾してるわ。
ああもう考えても仕方ないわね。
要は、ホワイトボックスとやらに着けばいいのよ。
美津子は ケーキをたいらげ、ジュースを飲みほすと
それぞれ元の扉へちゃんと戻しました。
扉を閉じたとたん、扉はすうっと壁の中へ消えて行きました。
「おいしいケーキとジュースを ありがとう!!」
美津子は、左右の壁にお礼を言うと、サーモンピンクの花柄模様の傘を拾って
再び歩きだしました。
まだまだ同じながめの廊下は、 延々と遠くつづいています。
まったくきりがないんじゃないかしら。
美津子は 何度も途方にくれました。
足も少々 痛んでいます。
いったい どこまで続いているのよ!!
bottom of page